TIのTL497を使ったStep-Down コンバーターの制作2024年04月21日 09:10

自作のボードコンピュター用に、出力16VのACアダプターをTA7805で5Vに落とした電源器を使っていました。 とても発熱がとてもひどいので、対策を考えていました。今回は、TIのスイッチングレギュレータ用IC TL497を使ったStep-Downコンバーターを 使って、発熱の少ない電源を作ってみました。

TL497をStep-Downコンバータとして使うのは、初めてなので3タイプを制作してみました。

  1. TL497単体で制作した、12V入力で5V/0.5A出力の電源
  2. 上の回路に外付けトランジスタを追加して出力電流を多くした電源
  3. 更に、入力電源電圧を16V用にした電源。TL497の最大電源電圧は15Vなのでひと工夫が必要です。

まずは、TL497単体で制作した電源です。回路図と外観はこのとおり。 (手持ちのパーツを使用したため、一部に大げさな規格のパーツを使用しています。)

回路はデータシートどおりです。

外付けトランジスタを追加して出力電流を増やしました。これで、1Aまで取れます。

15V以上の入力電圧に対応できるようにしたのが、これです。入力電圧を78L12で受けてTL497の電源にしています。 実際に長時間連続で使用しても発熱は少なくなり、当初の目的を達成できました。

6AV6-6AR5直結アンプ --測定編--2023年10月06日 14:09

入出力特性を測定してみました。アンプにはスピーカーの代わりに10Ωの抵抗を接続し、1KHzの信号を入力してダミーロード両端の 電圧を測定した結果は、このとおりです。約1.75Vあたりからグラフが寝てきます。このときの出力は、約0.3W程度です。

測定中に面白いことが起きました。入力を増やしていくと、ある点から音が聞こえだします。音のもとは、出力トランスでした。 ラジオ用の古いトランスですので、コアをまとめている枠に僅かな緩みがあり、それでコアが鳴いているようです。 トランスの交換を考えましたが、実験ですのでこのままにしました。

次にNFBをかけてみました。本来ならば、アンプ全体の特性を考えて、NFB量を計算する必要がありますが、 ここでは、エイ!ヤ!と、下記の図のようにしてみました。

これでNFB量は2.31です。dBで表すと、20log2.31=7.3[dB]です。これで、全体のゲインは、27/2.31=11.7[倍]になります。 NFB回路を追加して、同様に入出力特性を測定してみました。

グラフからゲインを見てみると、約11.3倍です。ほぼ計算通りです。また出力は、0.29[W]程度です。

これで、直結アンプの実験の完了としました。

6AV6-6AR5直結アンプ --制作編--2023年09月27日 09:50

制作しました。シャーシは手持ちのものを再利用したので、 無駄なあらが空いてますが、実験なんで、これで良しとしました。

内部は、こんな感じです。

問題の電圧配分は、このようになりました。グリットバイアスが、13Vと深めです。まあこんなものでしょう。

信号を入れてテストしました。左手の下は、300Hz/1KHzのツートーン・オシレーターで、その上が電源です。

スピーカーからは、それなりの音が出てきました。まあ、こんなものでしょう。ということで、制作完了としました。

6AV6-6AR5直結アンプ --設計編--2023年09月18日 16:29

電力増幅管6AR5のプレート供給電圧は、電源器の制限から240Vです。 前回はこの制約から、下記のように電圧の配分をしました。

まず、6AR5のカソードの電位は90Vになり、カソード抵抗には、プレート電流と第二グリッド電流が流れますから、5.4KΩになります。 6AV6のプレートは、6AR5のカソード電位より第一グリッドバイアス分低い電位になりますので、79.2Vになります。このとき6AV6のプレートには、 約0.1mA流れますので、6AV6のプレート抵抗を470kΩとすると、供給電圧は126.2Vになります。 プレート供給電圧を作るためのプリーダーに5mA流すとして求めた、回路定数は下記のようになりました。

制作にあたって、手持ちの部品とにらめっこしながら、回路定数を調整したのが、次の回路図です。

6AR5のカソード抵抗が小さくなってしまい、カソードの電圧がが低くなってしまいました。 それに合わせて、6AV6のプレート電圧も低くなっています。コンデンサで化粧を施した回路は、このようになりました。

では、早速制作します。

6AV6-6AR5直結アンプ --構想編--2023年08月29日 21:36

手持ちの真空管 電圧増幅管 6AV6 と電力増幅管 6AR5 で、直結アンプを作ってみます。直結アンプの製作実験です。 6AV6と6AR5は、ともにラジオによく使われた真空管です。

真空管アンプの電圧増幅管のプレートと電力増幅管のグリッドは、コンデンサを介して接続するのが普通です。

これに対して、直結アンプは、電圧増幅管のプレートと電力増幅管のグリッドを直接接続します。

電力増幅管のグリッドは、カソードからみてマイナスの電位になっていなければなりません。電圧増幅管のプレートはプラスの電位です。 ちょっと矛盾するようですが、

電圧増幅管のプレート電圧=電力増幅管のグリッド電圧<電力増幅管のカソード電圧

と電圧を配分することで、実現できます。

6AR5の動作例を調べてみます。誠文堂新光社から出ている「実用真空管ハンドブック」に掲載されている動作例を見てみますと、 プレート電圧 250Vで、約3Wの出力が得られます。この場合のグリッド電圧は、-18Vです。

6AV6の動作例をについては、「実用真空管ハンドブック」の動作例を見てみますと、プレート供給電圧が 100Vのとき57倍の増幅率があります。

実験用の電源の出力は、240Vしかありません。これを考慮して電圧配分を図示すると、このようになります。

次回は、これをもとにして設計します。

5球スーパーラジオの整備2023年05月31日 10:20

ヤフオク!をみていたら、昭和時代の真空管5球スーパーラジオが沢山出品されてました。 ラジオを作ってはバラしていた遠い昔、5球スーパーに挑戦し組み立てたけれど、きちんと調整できなくて 完成に至らなかったことを思い出しました。調整に必要なテストオシレーターを持っていなくて、 調整をうまくできなかったのです。現在は必要な機器を所有しています。1台入手して、昔を懐かしむことにしました。

ヤフオク!で比較的状態が良さそうな物を探して入手しました。松下電器のトランスレスの球スーパーで、中波と短波の 2バンドが聞けて、中央のダイアルゲージがあり、左右にスピーカーが付いてます。 運が良いことに、届いたラジオは汚れや痛みはあるものの、私の手で修復・整備ができそうなものでした。

状態は、ケース全体に汚れがあります。電源コードが傷んでます。全面中央のダイアルゲージは、細かい傷が付いており曇っています。

内部は、熱で変形しているところは無く、パーツにも損傷はみられません。オイルコンデンサーや電解コンデンサーは、 無条件に交換します。真空管はゲッター膜が十分あり元気なようです。

不具合がないことがわかったので、電源を入れてみました。パイロットランプが切れてます。 ボリュームのガリとスイッチの切り替え時に大きなクリック音があります。

まずは、キャビネットの手入れです。取り外せる部品を取り外して、水洗いしました。 全面中央のダイヤルゲージ窓をピカールで磨いたところ、透明感が戻りました。

内部は、まずオイルコンデンサーを ほぼ同容量のセラミックコンデンサーと交換、電解コンデンサーは立形の物に交換。 ついでに、ダイアル糸も変えました。ダイアル指針の位置を所定の位置にセット。

ここまでで、シャシーの内部は、このようになりました。

ケース背面のアンテナ線とアース線の端子は、特殊なプラグだったのでジョンソンターミナルに、フォノ入力は3.5Φのジャックに交換。 ジャックは、ステレオ入力用とモノラル入力用を用意しました。これらのパーツを取り付けるため、新たにアクリル板で パネルを作り直し。電源コードも交換。背面はこのように。

調整です。まずは、IFTを調整。結構ブロードでした。

トラッキング調整には、悩みました。この5球スーパーは中波と短波の2バンドです。局発コイルは、中波用のコイルと 短波用のコイルが同一ボビンに巻かれており、なおかつ、コアが入っています。

まずは、中波から調整。600kHzで局発コイルのコアを 1400kHzで局発側のトリマを調整。2,3度繰り返した後、 アンテナ側のトリマを1400kHzで調整し、中波の調整を完了。

短波帯は、4MHzと11MHzで、アンテナ側トリマと局発トリマを交互に調整し完了。

アンテナ端子に3mぐらいのビニール線をつけて受信状態を確認。

再組み立てをして、作業完了。


インテリアとしても使えるぐらいに修復できたでしょうか。

6L6GCシングル・パワーアンプの修理2023年04月29日 15:41

オーディオ用の自作パワーアンプを2台持っています。6R-A8シングルと6L6-GC シングルです。この2年間程は6R-A8シングルを使っていました。 久しぶりに6L6-GCシングルを使おうとセットしてみました。

で、トラブル発生です。 電源を入れたところ、右のスピーカーから変なハム音が聞こえだし、 どうしたんだろうとしていたら、ボン!と爆発音がして、アンプの底から白煙が 出てきました。どうやら、電解コンデンサがパンクしたようです。

ひっくり返してシャシー内部を見ると、右チャネル6L6-GCのカソードに入れてある バイパス・コンデンサがこの通りパンクしていました。

カソード抵抗の両端に高い電圧が発生したのでしょう。 抵抗の両端に電圧計をつないで計ってみました。真空管があたたまるに連れ、 電圧がドンドン上がっていくのが確認できました。6L6-GCをつまんでグラグラと 動かしてみると正常な電圧を示すことがあります。どうも第一グリッドがオープン、 つまり、ゼロバイアスになり、カソードに過大な電流が流れたのでしょう。 案の定、様子見をしている最中にカソード抵抗が焦げてきました。 ソケットが古くなって、端子のバネ性が弱くなり接触不良を起こしたようです。

てことは、このアンプは、5年ほど前に今回のような症状を見せたことがあり、 その時は、6L6-GCを交換しました。 このときも、ソケットの接触不良が原因だったの可能性があります。 真空管を交換することで、たまたま、接触不良が解消したのでしょう。 根本治療になっていなかったようです。

今回は、コンデンサと抵抗だけでなく、ソケットも交換しました。

音出しをして、修理の確認をしました。

実は、以前のトラブルのときの6L6-GCを保管していたので、 差し替えてみました。なんと、トラブルなく音が出ました。前回のトラブルも ソケットの接触不良が原因だったことが確認できました。なんとお粗末なこと。 この2ヶ月程、毎日のように使っていますが、トラブルは再現しませんでした。

これで修理を完了としました。

ディップメーターの製作2022年11月03日 16:51

FETを使ったので「Gate Dip Meter」です。これは、鈴木徳次著「高周波回路の設計・製作」(CQ出版社1992年)に掲載されたものベースに、製作したものです。
6つのコイルを差し替えて、3.5MHzから66MHzをカバーします。
外観は、こんな感じです。

ダイアルは、円形のアクリル板に紙を貼り付け、メモリを手書きしました。精度はありませんが、実用上問題はありません。

内部はこの様になっています。

電源の電池を入れるスペースが、ギリギリでした。

製作の肝は、コイルです。適当に周波数レンジをオーバーラップする必要がありましたので、巻いたりほどいたりして調節したうえで、シュリンクチューブをかぶせました。

SP,LP,Single,EP〜レコードの話2022年08月04日 16:48

ヤフー・オークション!を利用しています。レコードを眺めては、こんなじゃケットがあったんだとか、この歌手はこんなレコードを出していたのかとか、 眺めています。出品者の説明書きに、ちょっと気になることがあります。それは、SingleをEPとしている方が多いのです。

レコードの種類は、SP,LP,Single,EP(コンパクト)があります。大雑把な分類をします。

  • SP Standard Playの事で、78回転で、直径は主に30cm。昔の手回し蓄音機や電池蓄で使用されていた。 回転が早いので収録時間が短く、長いクラシック曲は細かく分割して収録されていた。交響曲一曲が10枚セットぐらいになったらしい。
  • LP Long Playの事で、33 1/3回転で、直径30cm(12inch)。昔は25cmのもあった。この規格になって、長いクラシック曲を 細かく分断すること無く収録できるようになった。オーディオ機器のチェック用の特殊な盤や高音質を狙った盤に、45回転のものもあります。
  • Single 45回転で、直径18cmm(7inch)。その名前の通り、片面に一曲、両面で二曲、収録されているのが普通。時々、片面に2曲なんてのもあった。 MAXI-Singleとして、直径30cm(12inch)なんてのもある。
  • EP Extended Playの事で、コンパクトとも呼ばれることがある。直径は18cm(7inch)。日本国内では、33 1/3回転が、海外では45回転が一般的。 片面二曲、両面で四曲、収録されている。Singleの拡張てことかな。

    レコードは未だ健在で、いろいろなところで入手可能です。新譜をレコードで発売する人もいるようで、こだわりを感じます。

    現代では、サブスクリプションで楽曲を入手することが多い中、レコードの趣向を凝らしたジャケットに愛着を感じるのは、私だけでしょうか?

  • TRIO TR-2200GIIのメンテナンス2022年07月17日 14:37

    TR-2200GIIは、トリオ(現Kenwood)が1970年代後期に発売した、ポータブル・トランシーバーです。 水晶制御式で、12チャンネル実装できました。このモデルの後は、PLL方式に移行します。

    TR-2200GIIは小型にまとめるために、送信用水晶(写真中左側12個)にはトリマー・コンデンサーがついていて微調整ができますが、受信用水晶(写真中右側12個)にはそれがついてません。

    そのため水晶によっては、受信周波数がずれてしまい正しく受信できなくなります。 今回入手したTR-2200GIIは、経年変化も加わり大きくずれているチャンネルが半数程度ありました。

    周波数ずれは、高い方にずれているものが多く、これはコンデンサーを水晶と直列にいれれば補正できます。 低い方にずれているものが2チャンネルありこれは補正できないので、アロー電子さんに特注しました。

    本来ならばトリマー・コンデンサーをつけて調整したいのですが、場所がないので、 少容量のコンデンサーを基板裏にハンダ付けし、カット・アンド・トライで何とか5KHz以内に調整することができました。